「イライラ」で仕事の効率がアップする!? 上手な怒りの対処法

仕事でついイライラしてしまったこと、ありませんか?
誰にでもあることとはいえ、イライラして仕事の効率が下がることや、長い間続くようなイライラは避けたいですよね。果たして、イライラにとらわれない方法はあるのでしょうか。今回はアンガーマネジメントの観点から、イライラの源である「怒り」とその対処法についてご紹介します。

「怒り」はなぜ生まれるのか

日本アンガーマネジメント協会によると、アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれたとされている、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。

このトレーニングでは「怒り」=「2次感情」と定義し、「怒り」の感情の前には、その出来事に遭遇した時に感じる「不安」や「不快さ」などといったネガティブな気持ち=「1次感情」があるとしています。
そして、怒りを感じる過程を次の3段階としています。

  1. 出来事との遭遇
  2. 出来事の意味づけ
  3. 怒りの発生

例えば、取引先を訪問する日、待ち合わせ時間ギリギリに同僚がやってきたとしましょう。
「待ち合わせでは10分前に到着するべき」という信念や価値観(コアビリーフ)を持つ人は、この出来事を受け入れられず、不快に感じて腹を立てます。

しかし「待ち合わせには間に合えば良い」というコアビリーフを持つ人であれば、ギリギリであっても間に合っているので、腹を立てることはありません。

出来事そのものに善悪はなく、単に「起きた」だけです。しかし、人がある出来事に遭遇したとき、自分が持つ「こうあるべき」が実行されていないと、ネガティブな気持ち(1次感情)が生まれます。そしてその想いがあふれて、怒り(2次感情)につながるという仕組みです。

つまり「怒り」は、自分にとって守られて当然の「べき」が守られていないときに発生するのです。

自分の中の「コアビリーフ」を知る

怒りとコアビリーフとの関係が分かったところで、自分にとってのコアビリーフについて考えてみましょう。怒りの原因になりやすいコアビリーフには、大きく分けて6つのカテゴリーが存在します。それぞれを象徴するキーワードと信念をご紹介します。

1.道徳心:正義感、マナー、規律の尊重
世の中にはルールがあり、道徳や正義を守るべきだ

2.利己心:排他的、完璧主義、潔癖さ
自分を守る(利する)ためには妥協や譲歩、異なる価値観は受け入れず、厄介ごとは回避するべきだ

3.自尊心:自信過剰、支配欲、プライド
自分は他者と比べて優れているなど、自分を大切にする気持ち・考えを持つべきだ

4.執着心:頑固、思い込み、自分ルール
自分自身のものの見方・考え方を持ち、それを基準に何ごとも判断することが大切だ

5.警戒心:猜疑心、不信感、劣等感
世の中を生きて行くためには、簡単に人を信じず、十分用心するべきだ

6.自立心:自己主張、独善的、批判的
長いものに巻かれたり流れに身をまかせたりするのではなく、自分の言いたいことは、相手が誰であってもはっきり主張するべきだ

怒りとは、コアビリーフの違いが「受け入れられない」ことであり、「他者と衝突する」ことであると言えます。良い悪いではなく、自分にとって受け入れることができるかどうか、他者と衝突しやすいものかどうかで判断してください。自分のコアビリーフについて客観的に知っておくことが、怒りをコントロールする第一歩となります。

怒りの対処法

怒りの対処法にはさまざまなものがありますが、次の2つがおすすめです。

対処法その1:カッとなったときには6秒ルール

カッとなったときの怒りのピークは6秒と言われています。つまり激しい怒りに駆られても、6秒経てば冷静になれるということです。この6秒を何とかやり過ごしましょう。
ゆっくり数字を数える、深呼吸する、水を飲む、好きなアーティストの歌を脳内ラジオにリクエストするなどなど、何でも良いので6秒間、怒りに集中している気持ちを他にそらしてください。そうすると、落ち着くまではいかなくても、怒鳴らずにはいられない感情は消えることが多いそうです。

対処法その2:自分のコアビリーフの「べき」を緩める

人間関係の基本ですが、自分は変われても他人を変えることはできません。特に人の価値観が多様化してきている昨今、自分の「こうあるべき」が強固過ぎると、怒りを感じる機会が多くなってしまいます。
たとえ怒りにまかせて怒鳴っても、価値観が違う相手には「なぜ怒っているのか」が伝わらない場合もあります。状況を悪化させるだけで何の解決にもならない怒りにのまれるよりも、まずは多様な価値観を認め、受け入れましょう。そして自分の怒りのボーダーラインを緩めたら、今度は相手の行動やコアビリーフを分析して対策を考えてください。

「イライラ」で仕事の効率をアップする

仕事の効率を下げると言われているイライラも、その活用方法によっては効率を上げる存在になり得ます。対処法でも述べましたが、イライラ=怒りは自分自身の感じ方・考え方で結構変わってくるものです。

イライラの原因は自分のコアビリーフ、すなわち「べき」にあります。

業務上の連絡にはすぐ返信するべき、情報は共有すべき、休みを取るなら事前相談すべきなどなど…。自分がそうすべきと思っていることでも、そこまで当然なことと思っていない人や、忙しさで忘れてしまう人など、実行の度合いは人によりさまざまです。こういったことに気をとられて仕事への集中力を欠いてしまうのは考えものですよね。

更にイライラを感じる頻度や強さ、継続期間、攻撃性によっては、自身の仕事の効率を下げるだけでなく、チーム内で怒りの連鎖を起こしかねません。

では、簡単な例を使ってまとめておきます。

事象:業務上の連絡にすぐ返信してこない人にイライラする
原因: 「すぐに返信するべき」という強固なコアビリーフ
<対策>
①怒りのボーダーラインを緩める
②冷静な対応で、今後はいつまでに返信が欲しいかを添えた連絡内容にする

①では自分との「違い」を受容してコアビリーフを緩める、②では怒りをコントロールしつつ今後の対策を講じています。

事象:業務上必要な情報をなかなか共有しない人にイライラする
原因:「情報は共有するべき」や「仲間である自分には真っ先に伝えるべき」といったコアビリーフ
<対策>
①感情的にならず、必要であれば適切な怒りの表現をして対応する
②穏やかなコミュニケーションで「なぜ共有しない・できない」のか、理由を引き出す
③共有ボードなど、情報を共有しやすい具体的な環境・設備を整える

①では効果的な怒りの対処・伝え方の選択、②では「違い」を受容したうえでの理由の把握、③で今後の対策という流れになっています。

このように自分のコアビリーフに気付くことで、その強固さを改めたり、怒りのコントロールを心がけることができ、改善策につなげることができます。単にイライラをぶつけるのではなく、怒りの感情への冷静な対処・分析ができれば、より効率良く仕事をすすめられるようになり、イライラを効率アップの種に変化させられるのです。

イライラしないように心がけるのも良いですが、完全に無くすことは不可能でしょう。むしろ感じて当然の感情なので、無理に否定せず、成果につながる活用をする方が建設的です。怒りを上手にコントロールして、イライラの原因を「失敗の種」ではなく「成功の種」に変えてくださいね。

 

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