スウェーデン流ワークライフバランスの秘訣

この間、友達とスウェーデンと日本の労働環境の違いについて話す機会がありました。

きっかけは、友達に「なんで仕事を辞めてスウェーデンにきたの?」と聞かれ、私が「家族みんなで夕飯の食卓を囲める国に住みたいから」と答えたから。「え、それどういう意味?」と、会話が広がっていくことになったのです。

前の仕事では、一般的な日本企業で働いていたのですが、残業が夜の9時10時まで続くことが多く、その環境で働くパパさんたちを見て、「奥さんやお子さんたちはどうしているんだろう…」と思っていました。その一方で、同僚の女性社員には未婚、もしくは既婚だけど子どもがいない、という2パターンの人しかいませんでした。自ら望んでそうしている人もいるとは思うのですが、この事実が物語る自分の将来が、少し不安になったのも事実です。

なぜ、日本では、仕事と家庭や育児の両方を選ぶことがこんなにも難しそうなのか。そして、なぜ、スウェーデンではそれが可能なのか。もしくは、本当に書籍などで語られている通り、スウェーデンではそれが可能なのだろうか。そんな疑問の答えを知りたくて、私はスウェーデンに来てみた、と言っても過言ではありません。

スウェーデンの人たちから聞いた実態とともに、スウェーデン人の働き方について、今回はまとめてみたいと思います。

ワークライフバランス

スウェーデンは、デンマークやオランダと並んで、ワークライフバランスを推進している国のひとつとして有名です。

1960年代から、国の福祉制度を大きく改革してきたスウェーデン。少ない人口で経済成長を続けていくためには、さまざまな工夫が必要だという認識がありました。その中の一つとして挙がったのが、家事・育児と仕事のバランスの維持に悩む女性が多いこと。

人口の半数を占める女性が思うように活躍できない社会になってしまっては困ります。その事実を受け、政府が主導となって、男性のより積極的な家事・育児への参加を促すことを始めました。

その結果として現在運用されている制度をいくつか見てみましょう。

育児休暇制度

スウェーデンの男女平等社会が反映された例として、育児休暇制度はよく話題に上りますね。

現在、育児休暇は夫婦合わせて480日間まで取得が可能です。取得中も、最初の390日間はおおむね給料の80%が、その後の90日間は平均給与支給額が支払われます。この育児休暇は、子どもが8歳になるまでに取得すればいい、ということになっています。自分にとって都合のいいタイミングを選んで良い、というわけです。

そのうちパパもママも90日ずつは取らなければならず(残りの300日はどう割り振るのも自由)、例えばもしパパが育児休暇を取らなければ、その90日分はママに移行することもできずに消滅します。それはもったいない!ということで、パパも、みんな必ず、と言っていいほどの高い確率で育児休暇を取得します。

よくあるのは、ママが産休・育休を終えたタイミングで、パパが半年間ほどの育児休暇に入る、というケース。ママはパパが育児休暇を取り家事・育児を担ってくれている間は仕事に専念できるので、よりスムーズな職場復帰のためにはとてもありがたいのだといいます。また、半年もの間家事・育児の責任が丸ごとパパに移るので、その後の夫婦間での中・長期的な家事・育児分担を考えるのにも役に立つんだとか。

また、育児休暇は夫婦で最長2カ月までは時期を被せて取ってもOKです。移民が多い国スウェーデンでは、これを祖国への長期間の帰省などに使うインターナショナルカップルも多いといいます。

子育て中にありがたい制度

育児休暇を終えた後も、幼い子どもを育てるパパとママに優しい制度がいくつかあります。

まず、子どもが8歳になるまでの間は、1日当たりの就業時間を25パーセントまで削減する(例:8時間労働を6時間労働に抑える)ことができます。もちろんお給料は働いた分しか支払われないので、75パーセントのペースで働けば、75パーセント分しか出ませんが。例えば上司とミーティングの予定を組もうとしたら、「あ、ちなみにこの日はお迎え当番だから。3時以降にミーティングはできないからね」なんて言われてしまうこともあるそう。

また、2歳から6歳の間の子どもは、必ず保育園に入れる、ということが保証されています。時おり、定員の関係で希望の保育園にすぐには入れず、まずはちょっと遠くの保育園まで通って転園を繰り返した後、やっと第一希望の保育園に入れた!というケースもあるようですが、必ずお願いした時期には入ることができるので、ありがたいことに変わりはないのだそう。

就業時間の現状

一般的な就業時間は週当たり40時間で、上限は48時間とされています。スウェーデンでは、残業をする人は、時間内に仕事をこなせない、だらしない人小さな子どもがいるのに残業ばかりしている人は、家庭を顧みない人でなし、とすらみなされるそうです。

もちろん管理職クラスになると、この限られた就業時間内ですべての業務を行うことは難しくなります。たとえ就業時間外であっても、メールなどの応対をしなかればならないこともあるそうです。しかしその場合は、仕事を家に持ち帰る、というのが一般的。午後5時以降は家族とのための時間、家族と交流するのが当たり前、という共通認識があるのだそうです。

それは家庭を持たない人にとっても同じで、午後5時以降は自分のためのフリータイム。街は家路を急ぐ人で賑わいますし、公園では気持ちよさそうにジョギングや散歩をする人の姿が多くみられます。また、ジムも混み合い、レストランやバーも賑やかになり始めます。

休暇

夏休みは毎年6月から8月の間。この間に1~2か月の休暇を取る人が多くいます。さらに、クリスマスと年末、そしてイースターの時期も休暇を取る人がほとんどです。これに、宗教的な祝日と、メーデーや国民の日などといった宗教に関係のない祝日が加わります。

これらを合わせて、最低でも年間当たり5週間の休暇を取ります。

休むからこそ働ける、というのがスウェーデン人の考え方だそうで、特に夏休みは、冬の気象条件が厳しい土地に住むスウェーデン人にとってとても大切な期間。太陽の光をたっぷりと浴びて、湖で泳ぎ、サマーハウスで自然を満喫すべきなのだそうです。

おわりに

このように、制度が整い、働くママにとってとても恵まれた環境が整っているように思えるスウェーデンですが、これから解決されていかなければならない問題はまだまだたくさんあるといいます。

例えば、病院関連や教育、保育関連の公共サービスに携わる仕事は主に女性が担っているなど、職種間の男女分業はいまだに続いていること。そして、子どもが生まれた後、育児休暇を取る日数や就業時間を削減する割合はいまだ女性の方が多く、やはりこういった現状が女性のキャリア形成を妨げていて、男女間の給料の格差もいまだに残ってしまっていること。

「まだまだ私たちは戦い続けなければならない」、と口にする女性が多いのもこのためなんだとか。

よく、スウェーデンに来た日本人女性と話していると「この国にいると強くなるよね」という話になります。自分の意見や権利を主張するスウェーデンの風潮に刺激され、自分の意見や権利をきちんと主張することができるようになったと感じる人が多いようなのです。

経済の規模や人口、そして文化的な背景など、スウェーデンと日本とは、異なるところが多いです。そのため一概に比べることは難しいですが、スウェーデンの女性に学べるところは多いかもしれません。

参考記事

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