思考の抽象化とは?本質を見抜く思考の概念とメリット・デメリット

ビジネスにおいて、物事の本質を把握するのはとても重要なこと。その本質を見抜く力が、抽象的な思考力です。今回は抽象思考について、その概念からメリット・デメリットまでをまとめました。ぜひ本記事を参考に抽象思考活用の第一歩を踏み出し、生産性向上につなげてください。

思考の抽象化とは?

ビジネスにおいて「抽象的」という言葉が使われると、あやふやでぼんやりとした物事をイメージし、ポジティブなニュアンスを感じにくいかも知れません。プロジェクト立案やマーケティングなど、誰が・いつ・どこで・何を・どうするのかが重要な要素となるタスクが数多く存在するためでしょう。
しかし「抽象的」であることがポジティブに受け止められ、歓迎される場面があります。課題の根本的な解決や業務の改善を目指す場面において、抽象的な思考は非常に有用なのです。

ではこの思考の抽象化/抽象思考という概念は、どのようなものなのでしょう?まず押さえておきたいのは、抽象化は曖昧にすることではないということです。抽象化とは、複数の物事が持つ固有の枠を超えて一般化すること。つまり、一段高いところから事象全体を見渡して共通の要素を取り出し、一つの概念にまとめることを言います。

よって抽象思考の概念は
・物事を大きな概念でまとめて一般化すること
・多くの情報の中から枝葉末節を削ぎ落とし、物事の本質を浮かび上がらせること
となります。

ここで抽象化の簡単な例を挙げてみましょう。
目の前にトマト、レタス、ピーマンがあるとします。これらを一言で表現するとどうなるでしょうか?

きっと多くの方が「野菜」と答えると思います。
実はこれが抽象化された考え方なのです。3つの異なるものから野菜という属性(共通点)を見つけて一つの概念にまとめ、一般化した例となります。

抽象化のメリット・デメリット

適度な抽象化は多くのメリットをもたらします。しかし何事においてもそうですが、行き過ぎは思わぬデメリットを生むことになりかねません。ではこれから、抽象思考のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット

・本質を見抜く力が身につく
・物事を単純で分かりやすくできる
・対処方法ではなく、達成したい目的を見据えたうえで必要なものを判断できる
・新しい切り口からの選択肢を考案できる
・既存の成功事例やシステムなどの汎用性を高められる

思考の抽象化は、その過程で重要度の低い情報を取り除くので、細々とした情報に惑わされて事の本質を見誤る事態を防いでくれます。また、受け取る側の能力に関わらず事象の大枠や本質が理解しやすくなるため、多くの人と容易に情報を共有でき、行動の動機付けもしやすくなるというメリットがあります。

本質の把握と単純化が、円滑なコミュニケーション多角的な視点による分析迅速な実行、幅広いタスクへの応用などにつながるのです。こうしたことは生産性向上や業務改善に大きな効果を発揮することでしょう。

デメリット

・最適な手段があるにもかかわらず、一般化されたものに変えてしまう
・偏った認識や思い込みを生む危険性がある
・話が大きすぎて分かりづらい(上手く伝わらない)

事象にはまず個々の物事があり、それぞれに固有の要素が存在します。ところがこれらを一つの概念にまとめてしまうと、各要素への意識が薄れがちになります。個々の物事に対する認識や最適な手法などを、一般化した内容に変容させてしまうのです。そのため、思い込みや事象の相関関係の誤認識が生じやすくなり、間違った判断や残念な結果につながる可能性があります。

また抽象化する対象やレベルによっては、あまりにも話が大きくなりすぎて分かりづらくなることもあります。たとえば新商品の開発会議でいきなり「世界を平和にする!」と言われても驚きますよね。頭の中に『何なの?』『どうするの?』などと次々に疑問が浮かんできて、新商品の開発どころではなくなってしまいます。
最終的な目標としてはありかも知れませんが、これでは開発に必要な具体的内容がまったく見えてきません。先にも述べましたが、抽象化とは重要ではない情報を削ぎ落とす作業です。そのため抽象化による結論だけを述べても、ほかの人にはそこに至った過程や理由が見えず、話が上手く伝わらなくなってしまうのです。

チームが効率よく仕事を進めるためには、分かりやすく適度に一般化されたビジョンの共有と、具体的な行動内容の提示という両輪が必要です。行き過ぎた抽象化は具体的な指針とのバランスを崩し、かえって物事を分かりづらくしてしまいます。これを防ぐには、枝葉末節にとらわれず一旦抽象化して軸を固め、それから個々の事例に視点を戻して具体策を考えるプロセスがベストです。抽象思考を使いこなすコツとして、覚えておいてください。

まとめ

個人だけでなく企業においても非常に有用なロジックである抽象思考。ぜひ身につけて使いこなせるようになりたいものです。メリットとデメリットを踏まえたうえで抽象思考を使いこなせるようになれば、ビジネスのみならずマルチな場面で大いに役立ってくれることでしょう。

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